火曜の朝、三本目の「まだですか」
火曜の朝十時。事務所の電話が鳴り、受話器を取ると、先週お預かりしたラグのお客様でした。「そろそろ仕上がりましたでしょうか」。台帳をめくって確認し、折り返しますとお伝えして切ります。十時半にもう一本、十一時前にさらに一本。三本とも、内容は同じお問い合わせです。そのたびに洗い場の担当者は手を止め、手を拭き、事務所へ戻り、また作業場へ帰っていきます。手を動かした仕事は一件も増えていないのに、午前中が終わっています。
このお電話は、お客様が心配性だから鳴るのではありません。お預かりしてから何の音沙汰もない状態が四日も続けば、どなたでも「忘れられているのではないか」と考えます。まして年末の大掃除の時期や、引越しの多い三月四月は、お客様のほうにも段取りがあります。いつ戻ってくるのかが読めなければ、部屋の予定が立てられません。つまりこの三本は、こちらの連絡が足りていないという合図です。
進捗のご連絡は、気配りの問題ではなく、段取りの問題です。どの段階で、どんな言い方で、どの手段でお伝えするのかを先に決めて、あとは毎回同じようにこなす。決まっていないから、忙しい日にだけ抜けて、抜けた日に電話が鳴ります。このページでは、その決め方を順にご説明します。ProTakip をお使いであれば仕事の状態を動かした流れのままご連絡まで進められますが、道具より先に、まず順番の話です。
ご連絡する五つの節目
一つ目は受付の確認です。お預かりした直後、あるいはご依頼をお受けした直後に、何を、いくつ、いつまでにという三点を一度だけお伝えします。ここで数量と仕上がりのおおよその日をそろえておくと、あとのやり取りが驚くほど軽くなります。二つ目は作業開始です。お預かりから日が空く業種ほど、この一本の価値が上がります。何日も動きがないように見える期間に、動いていることをお伝えするための連絡です。
三つ目は仕上がりで、ここは必ずお伝えします。四つ目は配送やご訪問の予定で、これは前日と当日の二回に分けます。前日は「明日の午後にお伺いします」、当日は「これから向かいます、三十分ほどで着きます」。前日の一本があるかないかで、ご不在で戻る往復の回数が変わります。五つ目は完了のご報告です。終わったことを言葉にして初めて、お客様の中でその依頼が閉じます。
五つの節目は、業種が変わっても形は同じです。カーペットクリーニング業の管理システムのように長くお預かりする仕事では作業開始と仕上がりが重く、ハウスクリーニング業の管理システムのようにご訪問が中心の仕事では前日と当日が重くなります。順番は同じで、力の入れどころだけが違います。
連絡しすぎると嫌われる、その境目
境目は、ひとつの問いで判断できます。「この連絡で、お客様の予定が変わるか」。変わるならお送りする、変わらないなら送らない。乾燥が終わった、検品を始めた、車に積んだ。こうした社内の進み具合は、お客様の一日を一分も変えません。前日のご訪問予定は、確実に変えます。この基準を社内で共有しておくと、担当者が代わっても連絡の量がぶれなくなります。
同じ節目で二回お送りしないことも大切です。仕上がりのお知らせを送った翌日に「まだお引き取りいただけておりません」と重ねると、催促に聞こえます。もう一度お伝えするなら、二日は空けて、文面を変えて、用件を足します。お引き取りの時間帯のご相談や、配送の空き枠を添えるだけで、同じ内容でも受け取られ方がまったく違います。
例外は、遅れるときです。遅れの連絡は、早ければ早いほど怒られません。当日の朝に「本日中の仕上がりが難しくなりました、明日の午前になります」とお伝えすれば、たいていは受け入れていただけます。夕方まで黙っていて、約束の時刻を過ぎてからお伝えすると、同じ一日の遅れが信用の問題に変わります。衣類やふとんをお預かりするクリーニング店の預かり管理でも、ここはまったく同じです。
伝わる文面の三つの型
一つ目、会社名を先頭に置きます。お客様の画面には、見覚えのない番号や差出人がいくつも並んでいます。誰からの連絡なのかが一行目で分からなければ、開かれないまま流れていきます。「◯◯クリーニングです」から始める。たったこれだけで、読まれる割合が変わります。屋号が長い会社は、お客様が呼んでいる短いほうの名前を使ってください。
二つ目、要件を一行目に書きます。時候のご挨拶も、平素よりのお礼も、二行目以降で十分です。「お預かりのラグ二枚、仕上がりました」。これを先頭に置いて、詳しいことは後に回します。通知に表示されるのは最初の一行だけですから、そこに用件が入っていなければ、開いていただけません。丁寧さは、長さではなく順番で伝わります。
三つ目、日時を具体的に書きます。「近日中に」「準備ができ次第」は、書いていないのと同じです。「木曜の午後二時から四時の間にお伺いします」と幅を持たせて書き、その幅を必ず守ります。こつは、守れる幅を書くことです。狭く書いて遅れるより、広めに書いて早めに着くほうが、お客様の満足はずっと高くなります。
そのままお使いいただける文面の例
受付の確認は「◯◯クリーニングです。本日、ラグ二枚をお預かりいたしました。仕上がりは来週火曜の予定です。ご不明な点はこの番号までお願いいたします」。作業開始は「◯◯クリーニングです。お預かりのラグ、本日から洗浄に入りました。仕上がりの予定は変わらず火曜です」。どちらも二文で終わっていて、お客様が読み返す必要のある情報はひとつも入っていません。
仕上がりは「◯◯クリーニングです。ラグ二枚、仕上がりました。配送をご希望の日時をお知らせください。今週は木曜と金曜の午後が空いております」。前日は「◯◯クリーニングです。明日、午後二時から四時の間にお届けにあがります。ご在宅のご予定に変更がございましたらご連絡ください」。空いている枠を先に示すと、返信が返ってくるまでの時間が短くなります。
完了は「◯◯クリーニングです。本日はお届けにあがり、ありがとうございました。仕上がりに気になる点がございましたら、一週間以内にご連絡ください」。お電話でお伝えするときも順番は同じです。名乗る、用件を一言、日時、最後に確認。「田中様、◯◯クリーニングです。ラグの仕上がりのご連絡です。明日の午後二時から四時でご都合いかがでしょうか」。これで二十秒です。
お客様ご自身が確認できる追跡リンク
いちばん強いのは、こちらから送る連絡ではなく、お客様が自分で確かめられる状態です。ProTakip では案件ごとに追跡のリンクをご案内でき、お客様はそこを開くだけで、今どの工程にあるのか、仕上がりの予定はいつかをご覧になれます。こちらが電話に出られない作業中の時間帯でも、お客様の確認は済んでしまいます。
追跡リンクは、こちらが送る連絡の回数そのものを減らします。「まだですか」のお電話の多くは、不満ではなく、単純に分からないから鳴っています。分かる場所があれば鳴りません。ただし、ご年配のお客様や画面の操作をなさらない方には向きません。その場合はお電話と併用して、無理に一本化しないほうが結局うまくいきます。
手段については正直に書いておきます。ProTakip には現時点で LINE 公式アカウントとの連携機能はありません。日本国内では、追跡リンク、アプリ内の通知、そしてお電話が主な手段になります。WhatsApp による通知には対応していますので、海外のお客様や在留外国人のお客様が多い会社では選択肢になりますが、国内のお客様に対する中心的な手段としては考えないでください。
電話でのご連絡の質を上げる
この業種では、結局のところ電話が主役です。ならば、電話そのものの質を上げるのが一番効きます。着信の瞬間にお客様のお名前、ご住所、前回のご依頼が画面に出れば、名乗っていただく前に用件の見当がつきます。「先月のラグの件でしょうか」と言えるかどうかで、会話の入り口が変わります。仕組みと設定は着信時の顧客表示のガイドにまとめました。
折り返しの取りこぼしも、連絡の質のうちです。作業中に取れなかった着信は、その日のうちに必ず一度かけ直す。かけ直したかどうかを記録に残す。この二つを決めておくだけで、気づかないまま失っていたご依頼が戻ってきます。空調設備の工事や修理のように、暑くなった数日に着信が集中する仕事ほど、この差は大きくなります。
予約のリマインドも、電話と組み合わせると効きます。前日にお知らせをお送りし、それでも反応のないお客様にだけ、当日の朝にお電話を差し上げる。全員にかける必要はありません。返事のなかった方だけに絞れば、手間は数分で終わり、それでもご不在で戻る往復はしっかり減ります。ご訪問の枠は、埋まっていた時間が空いても、当日の朝に別のお客様で埋め直すのはまず無理です。前日に一度確かめておくことの値打ちは、その一枠ぶんの売上と同じだとお考えください。
記録・時間帯・ご同意という三つの約束
連絡は、記録に残ってはじめて仕事になります。ProTakip では、お客様の顧客カードに、いつ誰がどんなご連絡をしたかが履歴として残ります。「言った」「聞いていない」というやり取りは、この記録があれば数秒で終わります。お支払いのお約束をいつお伝えしたかも同じ場所に残りますので、集金と売掛金管理のガイドでご説明した回収の段取りにも、そのままつながります。
時間帯の約束も決めておきます。朝は九時前に、夜は八時を過ぎたらご連絡しない。仕上がりが夜十時に終わったとしても、お知らせは翌朝に回します。深夜に届いた一本は、内容が良くても心証を損ねます。夜間や早朝の緊急対応を看板にしている会社は、その旨をあらかじめお伝えしておけば例外として成立します。決めておくべきは、社内で迷わないための線です。
最後にご同意です。ご連絡先は、ご依頼をお受けするときに「仕上がりのご連絡を差し上げてよろしいですか」と一言確認し、顧客カードに記録しておきます。ご連絡を望まないお客様には送らず、その旨も同じ場所に残します。この一手間があるだけで、後々の面倒がなくなります。導入前に何を確かめておくべきかは管理システムの選び方にまとめています。
よくあるご質問
お客様へのご連絡は、何回までが適切でしょうか。
節目ごとに一回、というのが基本です。受付、作業開始、仕上がり、ご訪問の前日と当日、完了。回数を減らすことよりも、同じ内容を二度お送りしないことのほうが大切です。迷ったときは、その連絡でお客様の予定が変わるかどうかでお決めください。
ご連絡した内容はどこに残りますか。
お客様ごとの顧客カードに、日時と担当者とあわせて残ります。過去のご依頼の履歴と同じ場所にありますので、次に同じお客様からお電話をいただいたときに、前回どこまでお伝えしたかをその場で確認できます。
夜遅くに仕上がった場合、その時間にご連絡してもよいですか。
おすすめしません。夜八時を過ぎたら翌朝に回す、という線を社内で決めておくと判断に迷わなくなります。急ぎのご依頼で、夜間のご連絡についてあらかじめお客様の了解をいただいている場合だけが例外です。
スタッフが個人の携帯からお客様に連絡しています。問題はありますか。
二つあります。ご連絡の記録が会社に残らないことと、そのスタッフが辞めたときにお客様との接点が一緒に出ていくことです。ご連絡は会社の番号と記録の残る仕組みに寄せて、個人の端末は緊急のときだけに限るのが安全です。
追跡リンクを開いてくださらないお客様にはどうしますか。
無理に統一しないことです。ご年配のお客様や画面の操作をなさらない方には、これまでどおりお電話でお伝えします。追跡リンクは全員に行き渡らせる仕組みではなく、お問い合わせのお電話を減らすための一手段だとお考えください。